シンガポールの移民問題
高度に発達した金融大国のシンガポールは今や、移民大国としても別の顔を持っている。
この国は実際そこに住んでみないとわかりかねない側面を持っている。つまり一見自由そうな金融国
に見えても、実は厳しい階層国家を形成しているのだ。まず最上位に白人の投資家や和人、華僑が居座りその
下にmoney changer として二桁の掛け算を操るインド人が位置し、その下にマレー人が陣取り、その下に
スリランカ人やインドネシア人が配置されている。最下位のインドネシア人、スリランカ人、パキスタン人
等はトイレの清掃、公園の掃除、汚物処理に従事している。移民労働者達はそこそこに働き、おとなしくか
ったが、昨年突然大きな暴動をおこしたのである。このような暴動は1969年以来のものであり、あらため
て移民問題の根の深さをものがったのである。
シンガポール首相は、彼らは無法地帯の単なる不満分子に過ぎないといっているが、実際は社会から
疎外された人々で低賃金と低い身分に喘ぐ人人なのだ。この傾向はシンガポールのみならず、移民労働者
の置かれた立ち位置は世界に共通した現象であり、それをいとも簡単に局地的、一時的現象と片付ける
のは大きな社会的しこりを残すのである。要はアジアのシンガポールのみならず、イギリス、 ドイツ、フ
ランス、北欧などに見られる移民の不安定な立ち位置を精査し、その根本的解決を図らなければ、世界的不
安定な暴動という憂き目をもたらす事は必須である。移民労働というものが最早一地域の問題ではなく、こ
の21世紀に世界的共通の事項であり、それを世界的共通の監視機関が監視し、最低賃金、最低労働時間、
最低福祉等を保障するようなノウハウを築く事が一日も早く要請されている。この機関を設立するには今ま
で植民地を抱えていた欧米の国々が多くの移民労働者雇用のノウハウを持っているのだからその積み重ねは
重いことであろう。しかしその事象を参考にすると同時に古き植民地ー宗主国と移民労動という関係性だけ
で判断していくと必ず、移民労働者からの反発を招く。21世紀にふさわしい新しい、合理的労使関係
を築く事が最も重要なことだ。
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