ロシアとは何か?-中国側からみたロシアの一断面

 

 

 

発展する中国東北部―中露貿易特区と労働力問題を考える              

     去る7月下旬から8月初旬にかけてハルピンで行われた日中国際経済会議の出席のついでに牡丹江、中露国境の町綏芬河を訪れた。ロシア風の面影がどこか残ったハルピン、急速に発展する牡丹江はどこか田舎の雰囲気を残しながらエネルギッシュに躍動する地方都市といった感じだ。

  • この黒竜江省、遼寧省、吉林省からなる中国東北部は一億人以上の人口を抱え、北東アジアの中央に位置し、生産・輸出の中心的基盤をなし、また大規模消費市場として大きく発展してきた。
  • 従来資源供給基地に過ぎなかった北東アジア地域が縦横に走る道路、鉄道網、高速バスなどのインフラ整備で飛躍的変貌を遂げつつあることは驚異的なことである。
  • 国際会議でも感じたことだが、中国側の起業、イノベーションに関する熱の入れようは大変なもので、自社に対してプレゼンテ―ションをしたがる企業が数千社以上にものぼることである。このような起業、イノベーションに対する溢れるばかりの貪欲さを一応頭に入れて牡丹江、中露国境の綏芬河市に行かないと到底中国側の対ロシアに対するスタンスは理解できないだろうと思われた。この会議は中露貿易特区を視察するうえで格好の予備知識をあたえてくれた。
  • 中国の交通インフラの整備は驚くべき迅速さで進行している。これに呼応するかのように隣国のロシアもこの10年間でBAM回廊(バイカル―アムール)-従来はアルミニュウム輸送およびサハリンの窓口であったが、現在は大規模石炭輸送路として機能―や、SLB回廊-ウラジオストックからモスクワまでの自動車道路完成させているーの大動脈が完成されている。
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中露間の国境では綏芬河とグロデコボ駅の間がロシア側軌道と中国側軌道の4線軌道になっており、相互乗り入れをおこなっている。 また綏芬河回廊沿いの中露国境には自由貿易特区が設けられているが、質、量の点で残念ながら10年前とあまり変わり映えはしないといわれている。綏芬河―駅からハルピンまで中国鉄道により結ばれている。ハルピン―牡丹江は複線、牡丹江―鉄道口岸の総合貨物輸送能力は100万トン、2010年度の貨物通関量は51万トン2012年度は60万トンを超える見通しである。毎日の出入車両130台、ラッシュ時200台で、通関は主にロシア人で毎日2000人がロシア側から高速バスでやってくるそうである。(中国側 口岸の服務員の話)1994年1月に中露両国政府により「中露国境口岸協定」が調印され、通関の特別許可証が交付されており、通関時の煩雑さに特別な便宜がはかられている。

国際道路旅客・貨物輸送口岸になった綏芬河は2009年9月に国務院の許可により、本格的対外開始を始めたばかりである。ロシア人の通関者の多くは観光、買い物客として(実際は担ぎ屋として)通関し、両手に持てるだけの大量の物資を買い付け日帰りでもどるようである。綏芬河市のロシアとの国境沿いに「東寧口岸対ロシア貿易特区」が建設され、対ロシア製品の加工・組立・包装・中継等の企業が誘致されている。

近年ロシアでは木材の大幅な需要を見込んで原木輸出関税を20%~80%割増で出荷。中国側の原木輸入のうま味はなくなったという。このため中国としてはロシア側に工場を設置、そこで原木加工したのち、国内に移入の方法が最近多くとられているそうだ。また素材的には質があまりよくない、環境汚染により、劣化しているなどの評価もたまにくだされているようだ。

綏芬河市は現在ロシアからの輸入貨物1,000万tのうち70%以上が加工木材で、市内にも400社余りの木材加工企業がある。ロシアとの国境をまたいだ観光・居住・自由貿易地区「綏芬河貿易総合体」が建設されているが、人影もまばらだ。訪れたのが、土曜日のせいか、取引所もシャッターが下ろされ、ロシア製品の土産物店にも立ち寄る人の気配はなし。土産物を取り仕切る店員も100%中国人。東寧県に属する綏芬河市は面積7,140平方キロメートル、人口21万人。ウラジオストクまで153㎞、市内の国際バスターミナルからは30分毎にウラジオストク行き長距離バスが発。国際旅行客は30万人。木材産業等の他、中国有数のキクラゲ・マツタケの産地であり、石炭等の鉱産資源が豊富。市中心部にある青云デパートはいつもロシア人で賑わっているという。

統計に上っている中国側の輸入製品は主に燃料・エネルギー製品は55.6%、木材及びパルプ製品14.2%となっている。

化学製品14.0%、機械・プラント・輸送機械7.9%、食品、農産物の比率は4,7%となっている。主な輸入物品はエネルギ―製品、原木、パルプ、鉄鋼原料、冷凍魚 、肥料、航空機用燃料及び部品、未加工ニッケル、合成ゴム、原子力発電設備、エチレンポリマー合計額は全体の84%である。

中国側の輸出は機械、プラント、輸送機械49.6%、織物繊維製品・靴18.5%  金属製品は8.6%、化学製品は7.3%、食品及び農産物は3.4%皮革・原料は1.8%木材及び紙・パルプ製品は1.3%となっている。主要な輸出品は電子機器の部品、自動車部品、家電機器、家具、玩具及びスポーツ用具、などで輸出全体の67%を超える。

この中国側の輸出品、輸入物品をみるとすぐピンと来るのは中国側のロシアからの輸入製品は原料輸入が70%以上で、また中国側のロシアへの輸出物品は70%以上が加工品であることが際立った特徴だ。ということは毎日ロシア人の担ぎ屋が2000人もが綏芬河の口岸を通り、物品の買い出しに精を出し、担ぎ屋としてロシア側に物品を供給している事実とも符合する。要は冷戦時代にロシアがアメリカを見下し、優位性を保つために宇宙産業や戦闘機製造に大量資金をつぎ込み、軽工業に力を入れなかったツケが今頃出ているのだ。安価で丈夫な繊維品、気のきいた家電用品など生活を彩る物品の生産がおろそかにされ国民から不興を買ったが、その結果が緩慢に今頃でてきているのだ。1991年の社会主義政権崩壊後、石油、天然ガスなどの生産により何度かの経済危機を乗り切ってきたが、資源産業のみでは限界があることはロシア政府も百も承知だ。何とか資源を梃子に従来の宇宙産業、重工業機械産業、高分子産業などを更に高度に発展させ、合わせて新規産業の育成をも図りたいと思っているのだ。因みに名門ハルピン工科大学には1991年当時失職したロシア人宇宙科学者が移り、その宇宙技術が現在の中国の神仙打ち上げ成功の基礎になったとも言われている。

中露の国境を挟んだ経済交流は想像以上にがっちり組み込まれている。私はここでは数字をこれ以上あげつらう気はないが、積極的な点と否定的な点が微妙に絡まって混在しているようだ。そのうちの一つは労働者の移出、移入の問題だ。周知のようにロシアも日本も人口オ―ナスの国である。中国も人口問題を抱えているが、現在の人口はロシアとは問題にならないくらいかけ離れて多い。

中国東北三省で一億人と比較してロシアの沿海州は総人口高々二百万人にすぎない。しかもサハリン同様ロシア沿海州の人口は年年、減少気味なのである。ロシア人の若者に言わせると給料も低いし、仕事がつまらないと言うのだ。だから野心的ロシア人はみんなモスクワへ移住するか留学してしまうという。このような現象は誰よりもロシア政府自身がよく知っているだろう。有るロシア人政治学者はAPECを前にこの問題にきちんと取り組むべきことを声高に主張している。但し、この学者によるとロシアに外から流入してくる労働者は専門能力のない、知性も劣った人々だと嘆いているのである。併し「そんな贅沢言えるかい!」と云いたい。とにかくロシア側は圧倒的に労働力不足なのだ。この苦境を救うためには中国人労働者のロシアへの転出をどうしても考慮せざるを得ない。この8月のWTOへのロシア加盟、また9月初旬のAPEC会議以降どのような方針を打ち出してくるかが喫緊の課題であろう。

アムール沿海州のブラゴベシチェンスクは最も中国人労働者が多い町と言える。最近中国人は持ち前の積極性を発揮して農業単純作業以外にも多くビジネスにも乗り出し、ロシア人もタジタジと聞く。

またいくつかの軋轢もあり,刃傷沙汰までおきているというのだ。いずれにせよ、グローバル化時代経済が最も速く動く時代だ。中露の利益共同体はがっちりスクラムを組んでとどまるところ知らずだ。 

以上のような経済的緊密性のもとに中国、ロシア沿海州とも綏芬河ルートの開発には力を注ぎ、日本をも視野にいれた綏芬河-ウラジオストック―日本の物流ルートの基点としての役割を果たさせようと必死である。因みにロシア側はボストーチヌイ(ナホトカ)港に特別経済特区を作る予定をたて、綏芬河ルートの振興策としてグロデゴボのコンテナ積み替え施設の整備をすすめている。ロシア側のもくろみは将来的にはウラジオストックを極東地域のビジネス・ハブ港として位置付けている。しかし8月13日(2012年)中央日報日本語版によると事態は急転直下の展開をみせようとしている。

12日、「香港の招商局グループの投資チームが先月中旬に羅津・先鋒特区を訪問し、北朝鮮側関係者と今後の特区開発に対する基本的な合意をしたと明らかにしたそうである。1873年に設立されたこの会社は中国最大の国営港湾運営会社で、資産だけで1兆5000億元に達する。双方は現在、中国・大連の創力グループが開発中の第1埠頭と北朝鮮側が開発する第2埠頭、ロシア企業が開発中の第3埠頭を招商局が主導する中国国営企業コンソーシアムがすべて担当して開発し、50年間にわたり租借することで合意したそうである。このコンソーシアムにはそれぞれ中国最大国営不動産と総合建設会社である上海緑地と中建が参加する。
北朝鮮と招商局は現在創力グループおよびロシア企業と開発権買収に向けた交渉に入ったそうだ。創力側は2億元を求めており、ロシア企業は開発権放棄を拒否している状態だ。しかし、「北朝鮮の方針は確固としており、両企業が開発権を放棄しない場合には追加事業の禁止など多様な方法で圧力を加える計画のため、事実上中国国営企業コンソーシアムの特区独占開発は確定的」だそうである。招商局側はまた、3つの埠頭のほかに追加で3つの埠頭をさらに建設することで北朝鮮側と合意したとある。」

もしもこの中国国営コンソーシアムが実現するとするなら、ウラジオストックをハブ港にする価値は相対的に減少するかもしれないのである。羅津と新潟とは日本海をはさんで至近距離で対面する絶好の位置関係にあり、これぞ中国が長年望んできた日本海側への海の玄関口を半世紀にわたって手にいれることができるわけである。またある信頼できる筋によると中国は領事館敷地としてすでに新潟に5000坪の敷地を購入しているというのだ。この話はかなり早い段階から粛々とすすめられてきたきらいがある。併しロシアと北朝鮮間の鉄道協力会議も着々と進められてきた。1991年に北朝鮮は羅津を特別経済特区に指定。シベリア鉄道に続く北朝鮮の部分接続を2001年8 月合意(プーチン・金正日―モスクワ会談)2008年4月「ロシア鉄道」社長と北朝鮮鉄道相との間で調印。2009年「ロシア鉄道」は羅先コントランスによって線路整備に着手。埠頭整備を含むプロジェクトー259百万ドル。鉄道事業費1.95億ドルうち0.72億ドルがロシア負担。ついで2011年10月羅津―ハサン間試運転。この間羅津港第三埠頭の使用権利をロシアは49年間取得した模様。このターミナルはロシア石炭の輸出と韓国、その他の

アジア諸国からの物流に使用予定であり、2012年には約14万TEU,2013年 には

20万TEUの予定とある。このプロジェクト予定と合意事項がどのように整合性をもって解決されるかが焦眉になるだろう。

飛ぶ鳥落とすような中国側の敏速さにもっとロシア側も俊敏に対応し、危機感をもつべきだ。おっとり構えているような状況ではないのだ。ここら辺がエリツインに端を発したマフィア市場主義経済を変革していった国家資本主義と中国の国家資本主義経済との間の成熟度の違いを早くも垣間みせている

 

 

8月 16, 2012

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Category: 政治・経済

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